「新技術」みたいなものは大好きである。
だが、ドラマとしての「下町ロケット」は面白くも何ともない。
ただ暗いだけ。
好みなので視聴率がいいのはウケている人が多いということであろう。
それはそれである。
個人としては『偽装の夫婦』のほうがはるかにいい。
●[新ドラマ]最新映像1分まとめ! 池井戸潤 直木賞受賞作 10/18(日)スタート『下町ロケット』【TBS】
産経新聞 11月3日(火)9時10分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151103-00000508-san-ent
好調・TBS系「下町ロケット」成功の秘訣はキャスティング戦略だった…
10月期のTBS系日曜劇場「下町ロケット」(日曜午後9時)が、好調なスタートを切っている。
視聴率は第1話16・1%、第2話17・8%、第3話18・6%と右肩上がり。題名通りのロケットスタートを実現した理由の一つは、「NHK以上」といえるキャスティング戦略にありそうだ。(三品貴志)
■朝と昼の「顔」も出演
原作は、社会現象となった「半沢直樹」で知られる作家、池井戸潤さんの同名小説。
父が経営していた下町の工場を継いだ佃航平が、仲間とともに困難を乗り越え、ロケットエンジン開発の夢を追う姿を描いている。
主演の阿部寛をはじめ、倍賞美津子、吉川晃司、杉良太郎…と、出演者もベテランぞろいだ。
さらに、TBSの朝と昼の「顔」といえる2人が出演しているのも見逃せない。
佃(阿部)の元妻を演じる真矢ミキと、佃の工場を弁護する弁護士役の恵俊彰だ。
真矢は朝の情報番組「白熱ライブ ビビット」で、恵は昼の「ひるおび!」で、それぞれ司会を務めている。
■「狙っていない」はウソっぽい
阿部寛ら出演者は10月のドラマ開始前、番組宣伝のため「ビビット」「ひるおび!」に相次ぎ出演。
共演者でもある真矢、恵と軽妙なやり取りを交わしていた。
今回のキャスティングは、ドラマと帯番組を連動させ、3番組を盛り上げようという作戦なのでは…?
「『狙っていない』と言っても、ウソっぽいですよね」。
TBSの津村昭夫取締役は10月28日の記者会見で、3番組の相乗効果を期待していることを認めた。
津村取締役は「2人ともMC(司会者)ですので、(ドラマを)視聴者に届ける『窓』を広げたい、というのはあります」と説明。
その上で「もちろん真矢さんも恵さんも、役者として非常に魅力的」とフォローし、キャスティングに自信をにじませた。
■情報番組MC、異例の連ドラレギュラー
新ドラマの出演者がPRを兼ねて情報番組やバラエティー番組にゲスト出演するのは、ほかの民放局でも恒例化している。
ただ、逆に、情報番組の司会者が連続ドラマにレギュラー出演するのは非常に珍しい。
最近では、NHK「スタジオパークからこんにちは」司会者の一人、戸田恵子が、連続テレビ小説(朝ドラ)「まれ」のナレーションを担当するケースはあった。
NHKは以前からドラマと情報番組を巧みに連動させており、「あさイチ」司会者の井ノ原快彦と有働由美子アナウンサーが、直前まで放送された朝ドラの感想を言い合う「受け」への期待は大きい。
「宣伝しすぎ」との批判も含めてドラマへの関心を高めているのは事実だろう。
今回のTBSの戦略をNHKに例えれば、井ノ原や有働アナを大河ドラマにレギュラー出演させるようなもの。
こう比較してみると、TBSはNHK以上に大胆、といってよさそうだ。
■「3匹目のどじょう」狙う
TBS系「日曜劇場」といえば、半世紀以上の歴史を持つ伝統枠。
重厚なドラマも数多く放送され、今年4月期の「天皇の料理番」も、数々のドラマ賞を受賞。
インターネット上では「(同じ日曜の午後8時に放送されている)NHK大河よりも大河っぽい」といった声も上がっていた。
TBSの津村取締役は、NHKへの対抗意識は「特にない」としつつ、「日曜夜は、学校や会社を明日に控えた視聴者にとって、元気の出るドラマを届けていきたい」と強調。
平成25年7月期の「半沢直樹」、昨年4月期の「ルーズヴェルト・ゲーム」に続き、池井戸ドラマで“3匹目のどじょう”を狙うTBSの本気は、どこまで通用するか-。
(文中の視聴率はいずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)
』
『
現代ビジネス 2015年11月04日(水) 高堀 冬彦
https://www.blogger.com/blogger.g?blogID=1373239284673676154#allposts/postNum=0
まだ間に合う。絶好調ドラマ『下町ロケット』を見逃すな!
その圧倒的な面白さのヒミツに迫る
■ゲーム感覚で楽しめるTVドラマ
初回終了の後、本コラムで「抜群に面白い」と書いた『日曜劇場 下町ロケット』(午後9時)が、予想通りに高視聴率を記録している。
初回が16.1%で2話が17.8%、3話にいたっては18.6%と今期ドラマ最高視聴率を獲得した。
よく言われる「視聴者のドラマ離れ」は限定的な話に過ぎず、面白い作品は確実に支持を得ることが示された。
『下町ロケット』の好調で思い出したのは、スマートニュース社・松浦茂樹ディレクターの言葉である。
同社はスマホとタブレット端末向けにニュースを配信しているが、ライバルは新聞や雑誌、テレビではないという。
「ライバルはゲーム」と語っている。
「『ニュースを見るよりゲームをしている方が楽しい』と言われてしまったら、それまで」(毎日新聞10月15日付朝刊)。
この言葉は今のTVドラマにも当てはまるはずだ。
ドラマよりゲームの方が楽しいと思われてしまったら、見てもらえない。
90年代までとは違い、ドラマのライバルは裏番組だけではなくなった。
にもかかわらず、今も90年代までの感覚で制作されている作品は少なくない。
酷いものになると、まるでバブル期のトレンディードラマのままに見える。
それでは視聴者に受け入れられるはずがない。
ゲームが楽しいのは、目標や敵の存在があるからだ。
目標を達成すると満足感が得られるし、敵を倒せばスカッとする。
そして何より、自分が参加できる。
その点、テレビは一方通行のメディアだから、どうしても不利。
そんな弱点を補い、まるでゲーム感覚で楽しめるのが、『下町ロケット』である。
まず、主人公で町工場「佃製作所」を経営する佃航平(阿部寛)が愛すべき男だから、感情移入しやすい。
感情移入できる航平の前に次々と敵が現れ、倒していくので、見る側も痛快であり、まるでゲームをしているような感覚になるのだ。
序盤の敵は難癖のような訴訟を突き付けてきた一部上場企業「ナカシマ工業」と、困った時には知らぬ顔を決め込むメインバンク「白水銀行」だった。
序盤らしく、わりと簡単に倒せる敵だったので、さしずめ"ザコキャラ"といったところだろう。
この作品はゲームの中でもRPG(ロールプレイングゲーム)に近い。
航平は敵の「ナカシマ工業」を倒す際、辣腕弁護士の神谷修一(恵俊彰)らの力を借りた。
RPGにも味方の存在は不可欠だ。
味方の優劣が勝敗までを決めるのは御存じの通りである。
ストーリーが進むにつれて内容が複雑化し、仲間に敵が紛れ込む怖れすらあるのもRPGの特徴。
この作品もそうだ。
3話では「佃製作所」内に不協和音が生じ始め、技術開発部の若手エンジニア・真野賢作(山崎育三郎)らが航平の方針に異を唱え始めた。
また、やはりRPGと同じく、強敵として、ロケットの自社開発を目指す超大手企業「帝国重工」が立ち塞がる。
RPGに通じるとはいえ、作品全体の質が高いから、いわゆる"クソゲー"の類ではない。
原作者の池井戸潤氏(52)が希代のストーリーテラーで、元銀行マンとしてビジネスの現場も熟知している上、演出する福澤克雄ディレクター(51)らが原作の面白さを映像で忠実に再現しようとしているからだろう。
八津氏の脚本もテンポが良く、手に汗握らせる。
この3人が2年前の『半沢直樹』と同じ面々なのは知られている通り。
いま振り返ると『半沢直樹』もRPGに近かった。
半沢直樹(堺雅人)が支店長の浅野(石丸幹二)や大和田常務(香川照之)らの敵を次々と倒していったのだから。
その際、同期の仲間・渡真利(及川光博)らの力を借りた点も共通する。
■原作は池井戸潤の最高傑作!?
期待できるのは、小説版『下町ロケット』のストーリーが、『半沢直樹』を超えるほどに上質であるところ。
単なるエンターテイメント小説の域を超え、当代屈指の売れっ子作家・池井戸氏の最高傑作との呼び声も高い。
●池井戸潤による原作『下町ロケット』小学館文庫
そのストーリーだが、ドラマでは3話までに「帝国重工」が「佃製作所」に対し、ロケットエンジンのバルブシステムに関する特許の譲渡を申し込む。
だが、航平はこれを拒絶し、バルブ製品そのものの提供を提案する。
町工場とはいえ、メーカーなのだから、当然の申し出だった。
だが、「帝国工業」側は、町工場などに作れるものかと鼻で笑う。
これも超大手企業の感覚なら、仕方がないことだろう。
ところが、実際に航平たちの技術を見せられると、顔色を失ってしまう。
焼け野原を技術力で大国にした日本人の琴線に触れる展開だった。
ソニーもシャープも町工場からスタートしたのは知られている通り。
それが、押しも押されもせぬ大企業になった途端、威光に陰りが見え始めてしまった。
ひょっとしたら、町工場だからこそ持ち得る情熱が薄らいでしまったからかもしれない。
ほかにも大企業による不祥事は後を絶えない。
小説版『下町ロケット』は、自分たちのレゾンデートルを見失いかけている日本人に、原点を示してくれるストーリーになっていた。
実社会が透けて見えた。ウケるはずだ。
■阿部寛も吉川晃司も全員がハマリ役
役者陣の演技も素晴らしい。
ほぼ全員がハマリ役と言える。
初回と2話では「佃製作所」の経理部長・殿村直弘の立川談春(49)や神谷修一弁護士役の恵俊彰(50)らが名演を見せたが、3話以降のキーパーソンである吉川晃司(50)の起用も面白い。
吉川が演じているのは、「帝国重工」の宇宙航空部部長・財前道生。
まずは圧倒的な存在感に驚かされた。
同社の社長・藤間秀樹に扮するのは「杉様」こと芸歴50年以上の杉良太郎(71)だが、決して貫禄負けしていない。
吉川の存在感は折り紙付きだ。
2013年の大河ドラマ『八重の桜』では西郷隆盛に扮した。
「おいおい、西鄕どんは太っていて、眉毛は極太だろう?」という外野の声をよそに、類い稀なる存在感で演じきってしまった。
今回も吉川流を押し通し、財前になり切るのだろう。
そもそも吉川は誤魔化しが利かない舞台の仕事を何度も成功させており、やはり巧い人なのだ。
吉川は20年ほど前から何度か取材しているが、この人はドラマの出演依頼が多いものの、滅多に引き受けない。
作品と役柄に惚れ込まないと、やらないのだ。
恋愛ドラマの類は何度も断ったと聞く。
『下町ロケット』の原作と財前役には相当の魅力を感じたのだろう。
ちなみに吉川は大の読書家である。
落語家の談春、タレントの恵、アーティストの吉川とは違い、主役の阿部寛(51)はプロの役者だが、やっぱり巧い。
今の日本で屈指の演技巧者だろう。年齢を重ねるごとに渋みが増してきたところも魅力だ。
その気になれば、海外進出だって可能だろう。
『下町ロケット』においては、航平をスーパーマンと思わせないところに巧さを感じる。
航平が優秀なエンジニアで、誰からも好かれる好人物というだけでは、その存在が立派過ぎて、遠い存在になってしまう。
ところが、航平は身近に思える。人間臭いからだ。
「ナカシマ工業」から訴訟を起こされたとき、「なんだこりゃ」と情けない声を上げたり、訴訟用の想定問答がおぼえられずに「ダメだこりゃ」と嘆いたり。
さりげない演技だが、航平の人物像を浮き彫りにするには重要な場面だった。
約200人の従業員を率いながら、高校生の娘・利菜(土屋太鳳)には形無しであるところも愛らしい。
コメディもシリアスもどっちもOKの阿部だからこそ出来る演技だろう。
髪を染めず、一部を白髪のままにしているところにも町工場の経営者らしさが出ている。
阿部が役になり切ろうとしていることの表れだろう。
■視聴率30%超えもある!?
さて、原作を読んでいたり、あるいはWOWOW版やTBSラジオ版のドラマに接したりした方は御存じの通り、航平の前には今後も敵が現れる。
そして、難題にぶつかる。
ネタバレは避けるが、RPGを超える意外な展開が待っていることは約束できる。
この役者陣とスタッフなら、きっと感動も与えてくれるはずだ。
その上、後半からは未知のストーリーに入っていく。
朝日新聞で連載中の『下町ロケット2』の内容が、同時進行で盛り込まれるのだ。
異例の試みであるが、おそらく期待を裏切らないだろう。
キーワードは「プライド」だ。
今の日本人が忘れかけてしまい、ビジネスの現場ではほとんど聞かれなくなってしまった言葉だ。
仮にプライドが重んじられていたら、東洋ゴムや旭化成建材の偽装事件は起きていない。
『下町ロケット』の好調で思い出したことが、もう一つある。
近年のドラマ界は購買力の高いF1層(20~34歳の女性)とF2層(35~49歳の女性)の視聴者にこだわるうち、全体から見放されていたのではないか?
その点、この作品はビジネス界が舞台だが、F1層とF2層の支持も高いと聞く。
やはりF1層とF2層におもねらない『相棒 season14』(テレビ朝日、水曜午後9時)も相変わらず好調だ。
いちばん大切なのはまず面白い作品をつくることであり、視聴者ターゲットを定めるのは二の次にすべきだろう。
『下町ロケット』は内容が前向きだから、ウィークデーを控えて、ちょっと憂鬱な気分に陥る日曜の夜にも合っている。
これからまだまだ視聴率は上がっていくはずだ。
次回8日の放送からは、吹けば飛ぶような「佃製作所」と「帝国重工」がお互いのプライドを賭けて全面衝突する。
中盤のヤマ場を迎え、『半沢直樹』以来となる視聴率30%超えすら予感させる。
』
【偽装の夫婦】
『
●【ドラマ】偽装の夫婦 予告集 “3篇”【trailer】
●偽装の夫婦
』
『
WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2015年11月18日(Wed) 田部康喜 (ジャーナリスト)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5629
「天下の美女」天海祐希が演じる
日テレ「偽装の夫婦」は上質なコメディ
アラフォーを超えた女優はどこへ
天海祐希は宝塚歌劇団のトップスターから退団してから、20年を経た。
「アラフォー」の代表的な女優も50歳が間近い。
それなのにまったく年齢を感じさせない。
「天下の美女」といわれた美貌に衰えはない。
日本テレビ・水曜ドラマ「偽装夫婦」は、主演の天海がけれんみのない安定した演技で魅せる。
かわいいことが優先された女優の世界にあって、大人の天海のデビューは新鮮だった。
それは、日本の映画やドラマがしばらく忘れていた記憶だった。
図書館の司書・嘉門ヒロ役の天海は、独身を続けてきたが、大学時代に一度だけ恋をした陽村超治(沢村一樹)と結婚する。
彼は幼稚園の園長代理である。
超治の母・華苗(富司純子)が、余命半年のガンにおかされている、と告白して、超治に自分が死ぬ前に結婚することを迫った末のことだった。
ところが、この病気話は実は超治を結婚させるための嘘であったことがわかってくる。
しかも、超治はゲイであった。
宅配業者の青年である弟子丸保(工藤阿須加)に思いを寄せている。
天海が演じるヒロは、ほとんど感情を表に現わさない。
心の叫びは、古い映画の字幕のように現れる。
「なにいってんだ。ババア」
図書館の本を汚しては返却する中年女性に対して。
「わたしは本当に彼を好きになりそう」
ひとつ屋根の下に住みながら、「偽装夫婦」を演じているうちに、超治の純粋な心に触れて、かつての愛情を取り戻してきたのである。
ところが、ヒロがそのことを告白しようとすると、超治は憧れている保(工藤)のもとへ出かけてしまうのである。
酔った勢いで保に告白すると、保に驚かれてしまい、傷つく超治であった。
ドラマは上質なコメディに仕上がっている。
そして、これまで数々のドラマで高視聴率を獲得したように、天海の演技は確実である。
■汚れ役を演じても、「天下の美女」
天海の女優人生に欠けているのは、主演作に対する世界的な賞である。
主演女優賞を獲得して欲しいばかりではない。
カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの映画祭で監督が最高賞を獲得した作品のエンドロールに、彼女の名前を見出したい。
デビュー作には、その後の女優人生の将来が暗示されているものである。
天海のドラマ初主役は、フジテレビの「橋の雨」(1996年)だった。
伊集院静の原作。
CSの専門チャンネルで最近観た。
普通のOL役の天海が、ふとしたきっかけでヤクザの緒方拳と知り合う。
緒方は天海を自分の世界に引きずり込むことを避ける。
天海は自分も緒方と同じように、背中にコイの彫り物を入れて、結ばれようとする。
しかし、緒方はヤクザの抗争のなかで死んで、ついにふたりは結ばれない。
汚れ役を演じているようでいて、やはり「天下の美女」である。
制作者たちはそんな天海に、日本を代表する緒方を配し、ひそかに天海を慕う役に当時は若手の阿部寛を当てる。
宝塚の舞台で、トップスターを光り輝く存在にするように、相手役と脇役に演技力の高い人材を配する。
■家族の在り方を問う
今回のドラマも、偽装の夫婦をともに演じる沢村をはじめ、姑役の富司、叔母役には個性派女優のキムラ緑子が脇を固めて、宝塚のスターシステムのように天海を支えている。
「偽装夫婦」のテーマは、家族とはなにか、にある。
シリーズは毎回、小さな事件が起きて、そして家族が愛し合うことの難しさと暖かさを描いていく。
第6話(11月11日)は、超治が園長代理を務める幼稚園の園児がいなくなる。
母親の水森しおり(内田有紀)は実は、弁護士の夫から家庭内暴力を受けて娘の園児とひっそりと暮らしていたのだった。
居所をつきとめた夫によって、娘は実家に連れ去られた。
ヒロと超治は、園児の奪回作戦をたてる。
宅急便業者の保(工藤)が配達を装って、娘の実家に入り込み、あらかじめ録音しておいたが母親のしほり(内田)が外に出るように、という声によって、娘を救い出す。
そして、ヒロの素人とは思えない法律知識によって、再び娘を取り戻しにきた弁護士をやりこめて、奪回作戦は成功に終わる。
再縁を迫る夫に対して、しほりはいう。
「もうあなたと一緒にいるつもりはない。
いまはヒロさんと暮らすのが夢だ」
と。
男女の性差を超えて、さまざまなカップルの在り方を肯定する、LGBT運動がドラマの下敷きになっている。
超治と保、ヒロとしほり。
家族の在り方はこれから、多様になっていくのだろう。
こうしたドラマがゴールデンタイムに堂々と放映される時代になったことは、未来を暗示する。
さて、「天下の美女」である天海の未来である。
アラフォーを代表する女優として、アラフォーという言葉の流行に一役買った彼女は、50歳を間近に控えてどう変身していくのだろうか。
あるいは、いつまで宝塚のスターシステムのような、彼女にスポットライトがあたるドラマのなかで生き続けていけるのだろうか。
家族の在り方を問う今回のドラマの演技は、コメディアンヌでありながらシリアスな問題に切り込む二重性をもっている。
天海のなかに、引き出されていない可能性はまだまだあるのは間違いない。
』
『
※週刊朝日 2015年12月4日号 dot. 11月25日(水)16時12分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151125-00000012-sasahi-ent
天海祐希は結局不幸に?
ドラマ「偽装の夫婦」に評論家期待〈週刊朝日〉
再生がうっすらと見えるものの、油断は禁物?
漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「偽装の夫婦」(日本テレビ系 水曜22:00~)の脚本家・遊川和彦の“破壊”に油断できないという。
* * *
遊川和彦は「破壊」の脚本家だ。
氷のような女教師が、学校教育を破壊する「女王の教室」。
サイボーグのような万能家政婦が、希薄な家族関係を破壊する「家政婦のミタ」。
その破壊力がこれでもかと発揮されたのが、朝ドラ「純と愛」だ。
ヒロイン・純(夏菜)は、就職したホテルが外資に買収され、退職。
次に働くことになった下町の小さな宿屋は、火事で全焼。
母親は若年性アルツハイマーになり、父親は海で溺れ死亡。
やっと自ら開業したホテルは、オープン直前に台風が来て半壊。
夫・愛(風間俊介)は、脳腫瘍で昏睡状態のまま最終回……という、朝から視聴者を絶望のドン底に突き落とすかのような暗黒朝ドラだったことよ。
朝ドラだから、最後はヒロインが幸せになる。
家族や夫は、いつもヒロインを温かく見守っている。
な~んて予定調和を、ことごとくブッ壊したいという、圧倒的な意志。
でも毎朝15分ずつ、コツコツ不幸を見せつけられる、こっちの身にもなって!
とびきりの幸せ破壊王・遊川さんの最新作は、「偽装の夫婦」。
今回、彼が破壊しようとしているのは、「夫婦」という最小単位の家族だ。
常に貼りついたような笑顔を浮かべているヒロ(天海祐希)は、内心では毒を吐きまくる人嫌いの女。
そんな彼女が、かつて自分を捨てた男、実はゲイだった超治(沢村一樹)と結婚するはめになる。
このドラマに、いわゆる「ありきたりな家族」は存在しない。
元夫からのDVが原因で、男性恐怖症になったシングルマザー・しおり(内田有紀)は、ヒロに愛を告白する。
女を愛する女。
男を愛する男。
男を愛する男を、愛する女。
「偽装の夫婦」であるヒロと超治の家は、悩める傷ついた者たちの駆け込み寺のよう。
世間の常識を破壊しまくってきた遊川さんだけど、このドラマには破壊の先の再生が、うっすらと見える。
「理想」に見える夫婦や家族が、本当に幸せかどうかはわからない。
肉体関係のない「偽装の夫婦」、血縁関係のない「偽装の家族」こそ、実はいたわり合う関係を築けるんじゃないか?
そんな理想の「偽装の夫婦」。
しかしそこは、前作「◯◯妻」で、最終回にヒロイン・柴咲コウを土手の階段から転落死させたバッドエンド遊川。
天海祐希にどんな突発的不幸が訪れるのか、
予断は許さないけどね。
』